旅にグレイハウンド

西海岸をグレイハウンドで行く

2024.4.5-1 秋田

 

 

げんき!!

見よ!!!

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A K♡ TA!!

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あこた やん!

芝に自動制御のスプリンクラーが回り、気持ちのいい晴れ。一晩寝たら体調の雲行きも晴れました。

駅までの道を大急ぎで歩くのは、電車の本数が少ないから。一本逃すと予定が崩れるのは、大阪メトロに甘やかされた身には厳しい。

秋田駅はAKOTA越しに見えるように巨大で、スターバックス併設。朝のコーヒーを飲み逃してるので駆け込んだ。誕生日にドリンクチケットを母親と大叔母から6杯ずつ、友達から1杯いただいているので、スタバを生活に取り入れている。生活必需品のプレゼントは嬉しい……。

しかし店員さんがスロー! スタバの店員てそんなテキパキ動くイメージあんまりないけど、そういう問題じゃない! 朝のラッシュとか経験したことないんかも! 電車くるっちゅうねん!

接客業しかやったことないから、私は自分がお客の立場になったとき、急いでても「急いでるんで!」という態度はとらないようにしている。「急いでるんで!」という態度をとる客を見るとアホかと思うからだ。自分のせいでかつかつの時間になってるのに、威圧的な態度でこっちの作業を急がせる客というのは、悲しいことに世の中には多い。「急がないといけない時間になったのは誰のせいなんですか」と思う。「私にはタイムスケジュールがうまくできません」と喧伝しているようなものだ。

しかしそれにしてもゆったりした町の喫茶店のようなスターバックスだった。きっとイートインでなら居心地のいい店舗なんだろう。

余談だが、「エスカレーターどっちに乗るか」って地域性の出るものの代表として話題に上がりやすい。大阪は右に立つ、東京は左、京都は関西でも左、とか。で、徳島の大叔母に訊くとなんと「徳島には人がそんなにおらんけんどっちとか決まってないよ」なのだ。まず、エスカレーターが「階段を登る」という動作の省略のためにできた機械なのだから、「左右どっちかに寄って乗り どっちかは歩く専用」という使用方法が間違っている、し、じっさい機械への負担も大きいし、人の流れを滞らせさえすれスムーズにさせる使用方法ではないらしい。大阪に長いこと住んだ身としては、エスカレーターは左を歩いて当たり前、カフェのテイクアウトはぱっぱと商品が出てきて然るべき、自動改札がないわけないので駅ではICOCAで入場、そういう常識が染み付いている。けれどもこれって日本においてもそんなに広い地域で適用されている常識ではないんじゃないか。

イタリアでは、カフェやバーに入り「チャオ」と声をかけ1ユーロを差し出せば、一瞬でエスプレッソが出てくるという。カフェの常識というのはどちらかというとそういうファストな感じにあるんじゃないかと思っていたけど、日本の田舎に根付いているのは喫茶店的な長居してゆったり過ごすための場所という形なのかも。

 

目的地の駅には自動改札がない。そのため切符を購入し、スタンプを押してもらい入場。ホームにはもう電車が待っていた。当たり前のようにワンマン列車だ。

2車両しかない電車のドアはボタン開閉式。寒い土地ではその方がいいだろうなと思う。ホームから動かない限りドアが閉まらないなんて寒さにイライラするだろう。

ちらほら人が乗っていて、みんな平日の10時になにしてるんやろうと刃つきブーメランなことを考える。

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ずっと田んぼ。

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刈羽野という土地の、「大綱引き」が有名だという駅。

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ここを過ぎてすぐ、神社が見えた。その敷地に、信じられないくらい大きな綱がとぐろを巻いて横たわっていたので異様だった。知っているはずのものが規格外の大きさでそこにあるとちょっと怖い。いっしゅんだったので写真が撮れなくて残念だった。

今の時代は便利なもので、上の写真の位置情報から駅の付近をGoogleマップで検索し、出てきた、神社の名前。

浮島神社

Google マップ

Googleマップの画像に大きな綱が映っていた。現代、見つからないものってないなあ……。

 

「後三年」という駅があった。

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理由はやっぱり

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後三年の戦いだった。そんなことってある? 「関ヶ原の戦い」みたいに、地名が「関ヶ原」でそこであった戦いだから「関ヶ原の戦い」なんでしょみたいな、物事の順序……ってものがあると思ってたけど……。

笑いながら写真を撮ってしまいました。

 

電車に乗っていると、(全行程で1時間半)途中の駅で完全登山スタイルの白人男性がひとり乗ってきた。なんてマニアックな人なんだ……言葉なんて通じるはずがないだろうに……。日本好きの人なのか……? 自分も こと観光地についてはメジャーよりマイナーどころを好むほうだが、どんびきしてしまった。話をきいてみたかったな。日本を訪れる外国人観光客が、この国を見て何を興味深い、おもしろいと感じるのか気になる。

さて1時間半長かった。着いたのは横手駅。

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出迎えてくれるのは高橋優。実はJR秋田駅の発車メロディが「明日はきっといい日になる」なのだが、出身は横手市だそうだ。秋田の誇りなんだなあ。

思えば「明日はきっといい日になる」という考え方は、農耕民族的な感じもする。今日という日がうまくいかなくても明日がある、「きっと」いい日になるよと励ますけれど、まあ明日もよくなかったら明後日はきっといい日になるさ、って、ぜんぜん刹那的じゃなくて地に足のついた考え方だ。やることやってルーティーンを誠実にこなすと明日がやってくるんだ。ぐるぐる回る日々。この歌タイトルしか知らんけど。

……と思ってよくポスター見たら2016年のフェスのやつやんけ。新しく撮り直しーや! お互いに、どっちか、ちゃんとそういう場をつくったら??

 

さてはるばる1時間半も電車に乗って横手にきたのは、「秋田 名物」と調べた結果のこと。横手焼きそば、そのためである。

焼きそばというのはどちらかというと関東の文化のような気がする。関西人も焼きそばは大好きだろうが、「焼きそばを名物料理にする」という英断はなかなか関西人にできるものではない。だってどこで食べても美味しいやん、焼きそばなんて。

でもまあ滅多にこない土地の名物なんだから経験しておくしかない。横手駅には観光案内所があって、私はそこに駆け込んだ。

「横手焼きそばマップ」なるものが掲げられていたが、受付の女性に話しかける。「焼きそばが食べたいんですけどおすすめのとこありますか!」餅は餅屋、秋田のことは秋田の人に、横手焼きそばのことは横手のおねえさんに訊くのがいちばん正しい。

「ラーメン屋さんなんだけど、へのかっぱってところはたまに行く」こと、「そのすぐ近くに駅前にも支店を出してる食い道楽ってお店がある」ことを教えてもらい、意気揚々と歩き出す。

駅からお店の集まる交差点まで、歩く15分の間に、お店や賑やかなところはなかった。横手という地名は関西でいても聞いたことがあって、有名なはずやけど。電車でここまで来て観光する人なんてほとんどいないからかな。

 

ついた。

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開店は11時で、その5分前やけど 営業中 の札が下がっている。ので入ってみる。

店内では、店員たるおじいちゃん、おばさん、そして店員かお客か微妙なおばあさん、お客そうに見えるおばあさんがいて、お話をしていた。

私はカウンターに座り、やきそばを注文する。

横手焼きそば 600円

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”家のお皿”みたいなお皿にのってでてきた綺麗な焼きそば。お味噌汁つき。

味は、おいしかった。お好み焼きを食べに行ったらモダン焼きを頼んじゃうし、甲子園やお祭りでは焼きそば食べたいし。好きだから。

10分もかからずに食べ終えた。店内は個人的な置物がいっぱいのインテリア、お客そうなおばあさんはご近所ネイバーフッドのお話(一人称は おら だった)、流れるテレビ、フライパン。夜は居酒屋になるらしい。こんなに徒歩で移動している人が少ないというのに……。

退店し、まあふつうに焼きそば一人前を食べたので満足していた。

しかし、1時間半かけて来たのだ。このまま帰るのは悔しい。

食い道楽 本店

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へのかっぱの外観は2枚も撮っていたのに、こっちは忘れてた。

座ったカウンター席で、目をあげると

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嬉しい遭遇。まえにSixTONESのファンだったから、慎太郎の顔を見ながら食事ができるとなると、そうでないより少し嬉しい気がするな。

ホールはおばちゃんのワンオペ。仕事の合間みたいなサラリーマン数組や家族連れと、4,5組の客入り。さっきのお店では3分くらいで出てきたけど、20分くらい待って来た!ただの焼きそば!

横手やきそば 580円

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これがまずい!!

ぜんぜん攻撃したいとか批判する目的とかじゃなく、ただまずい。

焼きそばってたとえばクッキーやフライドポテトみたいに、振れ幅少なく驚きが介在しない代わりに一定の美味しさが担保されているものだと思っていた。というか少なくとも近畿以西ではそうなんだと思う。なので、前に母親が旅行中富士宮焼きそばを食べてまずかったという話をしたとき、「焼きそばがまずい」ということに理解が及ばなかった。蓬莱山のキラキラの実のなる木、カナダのオカナガン湖に宿る主オゴポゴ、紀元前につくられた水晶の頭蓋骨、オーパーツ、まずい焼きそば。出会ってしまった。

麺は古くなった輪ゴムみたい。見てわかるようにすごく汁けが多い。味は薄いのかもわからん、美味しくない。壊滅的に具がない。ぽろぽろしたひき肉みたいなものが入っているだけ。

まずもってB級グルメというのは、インターネットによると「日常的に食べられている安価で庶民的なおかつおいしい料理」というような意味であるらしい。ジャンキーで作り手の技量を問わない、「人生で一番美味しい」を目指さない代わりに、庶民のみなさま全員が週一食べて「ふつうにおいしい」と言うもの、ということではないか。

つまり、めちゃくちゃおいしい!!も、げろまずい!!も、感想として存在し得ないB級グルメという分野のなかで、まずい焼きそばに会えたというのは経験として興味深いものだった。残した。

忙しそうなおばちゃんと、カウンターに飾られた慎太郎をあとにお店を出る。

長袖Tシャツの上に薄手のパーカーを着ていても寒いのでメガドンキに行く。

道中に群生

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ふきのとう、よく見る。雪国って感じ。関西にも生えてるのかもしれないが、こんなふうに道端や田んぼの脇に生えているのは見たことがない。

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メガドンキでヤンキーの仲間になれそうな上着(ベティちゃんのバックプリント、黒くてもこもこ)を手に入れて、ふたたびの横手駅。

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どうでもいいけどドンキホーテというのは日本中どこででも同じような客層で心から安心する。私は人種や性別・性嗜好で人を差別することはしない。しかし顔つきや表情で人を分別する。自分よりも賢そうな人があまりいない空間というのは存在していて安心するものだ。同じ理由で、大阪の飲み屋街ではキタよりもミナミが好き。心斎橋とか歩いているとどうしようもなさそうな人をたくさん見かけるから。めちゃくちゃ差別主義者ではある。でも村上龍も、顔つき見るだけで殺したくなるおばさんみたいな奴は いるって書いてたし……。

生きていると自分のなかで価値観は定まる。物差しを形成する段階で、測る単位というものは選ばなければならない。メートルなのかインチなのか、人種や性別など生まれ持って不変のものなのか顔つきや社会性・知識などの後天的なものなのか。物差しを持たない人間は人を見る目がないということになるだろう。そしてその物差しはべつに右手に握りしめて往来を歩かなければならないようなものじゃない。区別はしないと頭のなかが散らかる。喧伝すると差別主義者だと叱られるが、事実は存在するのだ。

 

そう、駅の看板にある かまくら。「横手ふれあいセンター かまくら館」というのが駅の近くにあるらしく、寒くした部屋にかまくらが展示されているらしい。「かまくらとやきそばのまち 横手」。血糖値を上げる必要性を感じる。

 

ここからどこに行こうということになる。時刻はまだ13時。秋田駅に帰るにはまだ早いし、せっかく内陸まで食い込んできたのだから他の山っぽいところにも行きたい。

それでGoogleマップを眺めていたら、湯気の上がる滝の写真が出てきた。「小安峡」。温泉が沸き流れていて、その近くをプチハイキングできるらしい。

横手駅から電車に乗って30分、湯沢駅へ。

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少し歩いたところからバスが出ているみたいなのだが、バス停が見つからない。

道端の家から出てきたおばあさんを見つけたので、話しかける。「すいません、オヤスキョウというところに行くバスを探してるんですけど……」おばあさんは耳が遠く、あと他所からきた人に話しかけられることがまずないのか、とても面食らっていた。

「私はわからないけど駅の人がわかると思う」と困った顔で教えていただき、とても申し訳ない気持ちになった。自分のようにどこに行っても人にものを訊ねてしまう存在というのは時に脅威になるのだなと。それでもおばあさんは「気をつけてね」と、私がどこに行きたいのかもいまいちわかっていないはずなのに一言かけてくれた。ごめんね。

そして駅に戻り、観光案内所へ。

不思議なのが、こんなに電車の本数が少なくて、無人駅もある路線なのに、ある程度観光資源のある主要な駅には観光案内所がいちいち併設されていることだ。JRはお金が有り余っているのだろうか。働いている人で忙しそうな人ひとりも見かけたことがないけど。

係のおばさんふたりが話していたので、「すいません、オヤスキョウに行きたいと思ってるんですけど…」と声をかける。ふたり共が出てきて、これがバスの時刻表です、これがパンフレットで町歩きもできて、と教えてくれる、

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「でも……」

「小安峡は冬はやってなくてね、まだこの時期は閉鎖してると思いますよ」

「残念だけど……」

「えっそうなんですか! この近くは、じゃあ歩けないんですね……」

「上から滝を見ることはできるけど、水辺に下りることはできないね……」

ここでなにかの間違いが起きたのだ。

私は、今になってなぜ食い下がったのか理解ができない。

「滝を見ることはできるんですね! バスってどこから出るんですか?」

おばさんが外を見る。駅のロータリーに進入するバスが見える。

「あ、あれ! あれがバスですよ」

みんなでばたばたと案内所の外に出る。

「でもなにもないかもしれないですよ」

とひとりのおばさんが言う間、べつのおばさんは、ドアを開けたバスの運転手さんに「小安温泉まで連れて行ってあげてください」と伝えてくれる。親戚に見送られるような気分。

かくして私は軽い気持ちで、バスに飛び乗りおばさん達に手を振った。さようなら〜!行ってきまーす!

 

 

 

長いのでここでいったん切って、次の記事に続きます。